琥珀色の誘惑 ―王国編―
あの後、ミシュアル王子は舞を離宮に送り届けると、すぐに首都に戻って行った。

ライラは離宮とは別の場所に保護されたらしい。舞とは離しておくように、とミシュアル王子が命令したようだ。

一方、ラシード王子は怪我をしているにも関わらず、ミシュアル王子と一緒に首都に戻った。


だが翌日、なんとラシード王子は再びカンマン市の離宮にやって来たのである。


『クアルン王国第三王子、ラシード・ビン・カイサル・アール・ハーリファです。アーイシャ・モハメッド・イブラヒーム嬢を、王太子の妻とするべく、国王陛下より使わされました。今よりあなたを、アル=エドハン一族の下に送り届けます』


ラシード王子の言葉の内容を知り、舞はホッとして尋ねる。


「じゃあ、ライラのことは……」


(アルが結婚しなくても済むんだわ!)


舞が満面の笑顔を向けると、ラシード王子はサッと視線を逸らせた。


「結婚の儀式は、アル=エドハン一族のしきたりに則り、明日の夜行われます」


日本語に切り替えると、ラシード王子は喉を絞るように言葉を続けた。


「王太子と、ライラ・ビント・マッダーフ・アール・ハルビー嬢の結婚式を終えた後で……」


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