琥珀色の誘惑 ―王国編―

(22)花嫁がふたり

極上の絹糸に金糸を混ぜて織り上げた花嫁衣装。何年も掛けて織られたことは間違いない。

下着から、その上に身に付けるローブモンタントに似たデザインの衣装まで。その全てに、金色に艶めくシルクが使われていた。

西洋のドレスと違う点は、ウエスト部分に切り替えがないことだろうか。ペチコートやコルセットも付けず、ストッキングも穿かずに裸足だった。

花嫁のベールも同じ生地で作られていた。それをヒジャブと同じようにグルリと巻いて頭に被る。

加えて、翡翠と琥珀で作られたネックレスとブレスレット、そして髪飾りを身に付け、舞は薄い化粧を施していた。ベールを被るのは挙式直前である。



「アーイシャ様……間もなく結婚の儀式が始まる時間です」

「ん、そう……だね」


それは一回目、第一夫人との結婚の儀式である。

テントの中、舞はシャムスの言葉に小さく相槌を打ったのだった。


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