琥珀色の誘惑 ―王国編―
沈黙するミシュアル王子に向かって、ラシード王子は思いつく限りの疑問をぶつけてきた。


初夜を誰と過ごすつもりか? ひとり寝を強いられた花嫁が、あまりに哀れではないか?

王宮に戻れば祝宴も即位の儀式も待っている。花嫁をふたり同席させては、日本との関係が悪くなりかねない。

そして世界中に、クアルン王国が女性を対等に扱えない野蛮人の国だと指差される、と。


『第一、ライラを正妃にして、妻として扱わないなど許されないだろう? 全てにおいて平等に扱うことがアッラーの教えだ。アル……母上がそうであったように、アーイシャ殿には耐えられないほどの悲しみを』


次の瞬間、ミシュアル王子の右手が、弟の喉元を押さえつけた。 


『よく回る舌だな。同じだけ頭も使え』



ただでさえ、怒りと苛立ちを抑えながらここまでやって来たのだ。その上、ラシード王子にうるさくたかられたのでは敵わない。

ミシュアル王子は弟を放すと、中央に置かれた布張りのソファ腰を下ろした。

そのまま静かに目を閉じ、意識を集中させる。


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