琥珀色の誘惑 ―王国編―
やはり目の前で人が死ぬのは見たくない。

とはいえ、自分が殺されるのもイヤだ。ましてや、ミシュアル王子が殺されるのはもっとイヤである。

それはこの国に嫁ぐ以上、舞が乗り越えねばならない課題だろう。


ふたりが三十分も馬に揺られていると、背の高い岩場が見えてきた。


ほどなく、大きなテントとたくさんの灯りも目に飛び込む。岩の陰になっていたらしい。灯りは松明の火だ。


砂上には、夜目にも眩しい白い絨毯が通路のように敷かれ、複数の人影が行き来している。


(やっと、ミシュアル王子の花嫁になれるんだ)


舞の中に緊張が走り抜ける。

入り口付近でミシュアル王子は先に白馬から下り、続けて、舞を抱き上げるように下ろしてくれた。

彼女はさらさらの砂を踏み締めてしっかりと立つ。 


ミシュアル王子の指がスッと舞のアバヤを外し――そこに、白と金に輝く衣装を身に纏う、黒髪の花嫁が姿を現した。


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