琥珀色の誘惑 ―王国編―
周囲から、深いため息が零れる。


『遅かったな、ミシュアル』


そんな中、ミシュアル王子に親しげに話しかける男性がひとり、二十代後半くらいか。王子と同じように裾の長い、儀式用の白いトーブを着ている。瞳は黒に見えるが、グトラで髪の色まではわからない。


『ああ。少し手間取った。サディーク、出来れば日本語で頼む』

「わかった。はじめまして、アーイシャ……ビント・ジャミール(美しい私の娘)」


後半はアラビア語で、意味はわかるようなわからないような……。

舞は首を捻りつつ、ミシュアル王子に視線を移す。

すると、彼は一言一言区切るように、舞に伝えたのだ。


「舞、彼が儀式に立ち会う“お前の父親”だ」

「……父?」


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