琥珀色の誘惑 ―王国編―
その昔、式を挙げて初夜の儀式を済ませ、そのまま戦に出て帰らぬ花婿も多かった。

残された花嫁が身篭った時は、この儀式さえ無事に終えていれば、無条件で花婿の子供と認められたという。

その為に、花嫁が純潔であった証が何より大事。DNA鑑定などない時代には、欠かせぬ儀式だったのかも知れない。


「それは判るけど……でも」


この時代に必要ないじゃない、と思う。

それだけでなく。舞にすれば、寝室を覗かれているような気分なのだ。


「みんなに……笑われてる気がして」


そんな舞にミシュアル王子は首を横に振りつつ、至極真面目な顔で答えた。


「それは逆だ。――母上は当然純潔であったが、父上は全ての儀式を蔑ろにした。異国の地で本能のままに奪ったのだ。そして、正式な婚姻前に産まれた私は、幾度となく検査を受けることになった」


トーンの低い声で王子は続ける。


「舞。私は、全てにおいてお前を完璧な妻にしたい。やがて産まれる息子や娘に、私のような思いはさせたくはないのだ。たった一日、我慢してはくれぬか?」


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