琥珀色の誘惑 ―王国編―
『ミシュアルさま。すぐに首都の機動部隊を』

『いや、野営地に戻る』


カンマン市から八十キロ程度の場所を現在の野営地としているアル=バドル一族。彼らより更に南下し、ラフマーン国との国境約百キロという場所にアル=エドハン一族の野営地があった。


舞をクアルン王国ミシュアル王太子妃と知って狙ったのか、或いは、珍しい東洋人の美女を生け捕りにしたつもりか……。

どちらにしても国境付近か国境を越えての商売であろう。


首都から呼び寄せていたのでは話にならない。幸運なことに、マッダーフのために動かした部隊がまだ砂漠に残っていた。


『アーイシャの居所はすぐに知れる。何者であろうと、この私の妃を攫った報いは計り知れぬ。墓の下まで後悔させてくれよう!』


(よくも私の舞を――。捕らえた後は、生きたままハイエナの餌だ!)


ほんの数十分前までの甘やかなムードは消え去り……。ミシュアル王子の雄叫びは砂嵐となり、砂丘に吹き荒れた。 


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