琥珀色の誘惑 ―王国編―
定住民族はともかく、遊牧民族全てに住民登録を求めることはほぼ不可能だ。

よって、人数の把握すら大よそになる。中には国籍も曖昧なまま、砂漠を移動する者もいる。そういった連中は数にすら入っていない。


その上、各部族で問題を起こし、追放された者同士が徒党を組むケースも多く報告されていた。

その手の連中は指導者や国家に不満を持ち、盗賊に成り果てるのだから始末に負えない。


中でも危険なのが外国人観光客を狙う一団。

女性だけで居るところを狙い、あっという間に攫って行く。その目的の多くが人身売買。

いまだ、国境近くの町では地下組織の間で奴隷市が開かれている。一箇所を摘発して潰しても、国を跨ぎすぐに別の組織が暗躍し始めるのだ。報告によるとイタチごっことなっていた。



ミシュアル王子が砂丘の警戒を解いた一瞬の出来事だった。

敵は手薄になった所を一気にオアシスに近づき、舞たちを攫って行ったのだ。お付きの女も金になると思ったのかも知れない。

最後に二人の姿を見た、という場所には、馬の蹄の跡が多数残っていた。


ミシュアル王子はすぐに後を追わせたが……ラクダでは馬のスピードに追いつけない。彼らは途中で足跡を見失い、引き上げざるを得なくなる。


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