琥珀色の誘惑 ―王国編―
柔らかい地面に下ろされ、すぐに足元から冷たい風が吹き込んできた。麻袋の口紐が解かれたのだ。


(襲ってきたら蹴り上げてやる!)


舞は、やられっ放しにはなりたくない、と覚悟を決める。

そして麻袋が頭から取り払われた瞬間――。



「舞! 怪我はないかっ!?」

「ア、アル? なんで……アルが」


目の前に居たのは最愛の夫であった。


(どうしてアルが居るの? わたしってアルの傍から攫われたんだよね?)


「良かった。お前が無事で本当に良かった。――アッラーに感謝を捧げよう!」


訳も判らぬまま、舞はやたら興奮しているミシュアル王子に力一杯抱きしめられたのだった。


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