琥珀色の誘惑 ―王国編―

(7)キスで癒して

白いタイルに囲まれた、ごく普通サイズのバスルームの湯船に舞は浸かっていた。

シャワーを使ったのは随分久しぶりに感じる。狭い空間がホッとするなんて、つくづく貧乏性だな、と思う。

ただ、タイルが大理石で、シャワーノズルに金の装飾が施されているのはともかくとして……。



あの後すぐ、ナーヒードはミシュアル王子と共に迎えに来た夫に助けられ、嬉しそうに一族の元に戻って行った。


『アーイシャさまの仰る通りでした』


そんなことを言いながら、ナーヒードは舞の両手を握り跪く。

驚く舞に、


「アッラーと共にお前にも感謝を捧げている。強く凛々しい妃殿下である、と。舞……いったい何をしたのだ?」


ミシュアル王子は不思議そうな顔をしていた。


(別に何にもしてないよね? アルが必ず助けに来てくれるって言ったくらいで……)


舞の答えを聞き、ミシュアル王子は上機嫌だ。『妃と共によく耐えた』とナーヒードに“お褒めの言葉”を与えたくらいである。


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