琥珀色の誘惑 ―王国編―

(11)理想の花婿?

即位の儀式は、そう長いものではない。

カイサル国王と入れ替わるように、ミシュアル王子が王座に就き、アッラーに祈りを捧げる。

但し、ここでいきなり雨が降り出したり、雷が落ちたりすれば大変なことになってしまう。ミシュアル王子は国王に相応しくない、とアッラーの思し召しがあったことになるのだ。

しかし、首都ダリャには年間数えるほど、それも冬に集中して雨が降るだけ。当たり前だが天変地異は起こらず、即位の儀式は無事に終了したのだった。


王族・国賓・大臣たちが列をなし、一人一人から祝いの言葉が掛けられる。その全てに、新国王は答えねばならない。

それが終わればすぐ、祝賀パレードが始まる。

王宮前広場からダリャ市内を一周するのだ。男たちは道沿いに立ち、新国王に向かって口々に期待を籠めた言葉を叫ぶ。年寄りはひれ伏し、アッラーに祈る者もいた。女たちはそれぞれの家の窓から、パレードの様子を垣間見るのだった。


この日、クアルン王国に新しい国王が誕生した。


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