琥珀色の誘惑 ―王国編―
『ミシュアル――いや、国王陛下。あらためまして、この度はおめでとうございます』


ラフマーン・スルタン国の代表として参列したのは、王太子の第二王子サディーク王子だった。

彼らの国の王族男子は、髪を腰の辺りまで伸ばしている。サディーク王子も同様で、グトラの下は三つ編みにした黒髪だ。

形式ばった挨拶をするサディーク王子に、ミシュアル王子は不満を露わにした。


『よせ。形式にこだわるなら、私はお前を義父上《ちちうえ》と呼ばねばならん』

『それは確かに。私も君を息子と呼ぶのは楽しい話ではない。では、ミシュアルと呼ばせて頂こう』


二人は破顔一笑した。


祝宴が始まり、賑やかな音楽の演奏と踊り子のダンスも始まる。

彼女らは露出度が高く、クアルン女性は一人もいない。海外から祝宴用に雇い入れる踊り子たちで、早く言えばベリーダンスのダンサーたちであった。

この華やかな演出は、先々代の国王が取り入れたものだ。当時は高級娼婦も一緒に招き、乱交パーティと化していたらしい。

だが、そんなことを新国王が認めるはずがない。

彼女らが提供するのは踊りのみ、違うサービスを求めた者、応じた者は即刻逮捕が通達されている。


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