琥珀色の誘惑 ―王国編―
それは今でも同じこと。

遼が望めば、王妃の弟としてクアルンに帰化し、王族並の待遇を持って仕事が与えられるだろう。

しかも、彼が優秀であれば、王族の娘を娶ることも可能だ。産まれた男子には大臣になる資格が与えられる。

ミシュアル王子がそう言った話をすると、遼は口を開け呆然としていた。

その顔があまりに舞とよく似ていて、ミシュアル王子は親しみを禁じ得ない。


「あの……僕はまだ高校生ですし」

「我が国では十五歳でもひとりの人間として意見を述べることが出来る。特に、男はそうあらねばならない。両親と妻と子供たちを守ることが男の役目だ。充分な物を与える力がなければ、妻も得られず子供を持つことも出来ない。日本では三十を過ぎても相手が決まらぬというが……それは男として恥ずべきことだ」

「はあ、でも僕は日本人なので」

「何を呑気なことを言っておる! 遼、お前の姉は王妃としてハーリファ王家に加わったのだ。お前が愚かな真似をすれば、我が妃の恥となる。ひいては私の恥だ!」


ミシュアル王子の厳しい言葉に、ようやく彼も置かれた立場の重大さが飲み込めたらしい。


「が、がんばって、努力します」


素直で鍛え甲斐のある弟が出来た、と密かに喜ぶミシュアル王子だった。


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