琥珀色の誘惑 ―王国編―

(19)夢みるプリンセス

「ねぇ、アル。どうして男の人が一緒だとあんなに地味になっちゃうの?」


舞はキングサイズのベッドの中央に足を伸ばして座ると、ミシュアル王子に声を掛けた。


「男にとって女は存在だけで誘惑となる危険を孕む。また、酒は神を忘れさせ、歌舞音曲は堕落への後押しとなる。それでも、即位の祝宴は民俗楽器の演奏を許可したのだ」


今日のミシュアル王子は久しぶりのスーツ姿だ。

黒いシャツに黒のドット柄のネクタイ、同じ黒でも微妙に色が違う。スーツはチャコールグレーで、いつものトーブ姿よりクールな印象だった。


(アルってば、何を着てもカッコ良いんだからっ)


女たちだけの宴席では、派手にならない程度の踊りや音楽は認めているのだから文句はないだろう。とミシュアル王子は言う。

舞にすれば別に不満を口にした訳ではない。

ただ、


「アルに、綺麗に着飾ったとこを見て欲しかっただけだもの……」


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