琥珀色の誘惑 ―王国編―
今回の“里帰り”にしても同じだ。

舞が月瀬家に泊まる事は許されない。父親や弟が訪ねて来ても、面会にはミシュアル王子の許可と女官の立ち会いが必須となる。

サディーク王子が気を利かせたという話は黙認したが、国王であるミシュアル王子が表立って認めることは出来なかった。

王妃に高価な贈り物を与えるのはいいが、言いなりになっていると噂になれば、国王の威厳が損なわれる。ひいては王妃である舞の評判を落とすことにもなり兼ねない。


どちらにしても、ミシュアル王子も辛い立場だった。



日本での人前結婚式と披露宴は、舞と月瀬一家の為に行うものだ。

彼らが希望するなら、舞の衣装に合わせて紋付袴や束帯を着ることも覚悟していた。フロックコートで済むなら楽なものだろう。

そんな気持ちで祭壇の前に立ち、舞が父親と共に歩いて来るの見た時、彼の胸は高鳴った。


(なんと……美しい花嫁なんだ)


舞はプリンセスラインのウェディングドレスを着ていた。歩くとスカートのドレープを寄せた部分がふんわりと揺れる。トップスには小粒のピンクパールがふんだんに使われ、本物の輝きが華やかさを醸し出していた。

さらには王妃らしく、髪にパールとダイヤモンドのティアラが光る。アップにした黒髪が、舞をいつもより大人っぽく見せていた。

ただ、美しいがゆえの問題が一つ。


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