琥珀色の誘惑 ―王国編―
ベアトップはあまりにも露出度が高すぎる。艶やかな肩のラインが剥き出しになり、綺麗な鎖骨が丸見えだ。しかも……しかも、である!


(胸の谷間が見えているではないかっ!?)


だが、そこで怒りを露わにすればおしまいだ。

ミシュアル王子は最愛の妻のためグッと堪え、無理矢理だが笑顔を作った。

すると、舞も満面の笑みを返してくれた。


(まあ、仕方ない。今日だけは許そう……)


口の中で呟きつつ、彼は妙案を思いつく。多くの人間に肌を見せた罰だと言って、ベッドの上で“あんなこと”や“こんなこと”をさせてみよう――と。結婚式の間、不謹慎にもミシュアル王子の頭の中は、楽しい妄想で一杯だった。


永遠の愛を宣言した後は、招待客からキスコールが上がる。

おそらく、欧州の王室と勘違いしているのだろう。だが、この挙式披露宴は日本のルールに則って行われる。

舞の父親の不愉快そうな顔を目の端に捉えつつ……。


「え? あ、あの……アル?」

「これが西洋風であろう?」


戸惑う舞の腰を引き寄せ、一気に口づけた。

周囲からはワッと歓声が上がる。 

珍しく晴れた六月の初旬、クアルン大使館は国王と王妃の一大イベントに大賑わいの一日だった。


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