琥珀色の誘惑 ―王国編―
【番外編】

web拍手SS―フィアンセへの贈り物―

「ねぇ、シャムス。それって……」


舞はシャムスの頭を呆然と見つめた。今までヒジャブを被っていたので気付かなかった。

シャムスは嬉しそうな顔をして、


「はい。ターヒルさまから、日本のお土産をいただきました」


小首を傾げながら恥ずかしそうに口にする。小麦色の頬が薔薇色に染まった。


「私の髪に似合うだろう、とおっしゃって」


シャムスは豊かな黒髪をしている。大きな瞳と少しぽっちゃりした体型がとっても可愛らしい。

しかし、ターヒルはシャムスの素顔を知っているのだろうか? 本来、結婚前の男女が直接会話できるのは、女性の父親が同席した時くらいである。

でも、シャムスが女官として勤め始めたので、仕事の会話なら可能だろうが……。


「ふーん。ターヒルってシャムスの髪の色を知ってるんだ。ひょっとして素顔も」

「ま、まあ、お妃様! 私たちはそんなことはしておりませんっ! 私は、間違ってもターヒルさまに顔を見せたりは……」


ムキになるシャムスに舞は笑いながら言った。


「判った、判ったってば。でも、じゃあどうして?」

「私が髪の色をお伝え致しました。肌の色も、あと……体のサイズも」


シャムスは「キャッ!」と恥ずかしそうに言い、舞の背中をバシンと叩いた。


「嫌ですわっ! もう、お妃様ったらっ!」


体のサイズ――スリーサイズを聞くくらいなら、洋服をお土産にすればいいのに、と思いつつ。舞は走り去るシャムスの後姿を見送った。


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