琥珀色の誘惑 ―王国編―
ところが四年前、次男のアーディル王子が王位継承権を放棄した。同時に婚約も解消され、アーディル王子は国を出奔してしまった。

現在、彼は日本にいる。王子の身分は生涯捨てることは出来ない。だが、彼はクアルン国内における全ての権利を王命により失った。

そのため、ミシュアル王子に何かあった時、王位を継ぐのはラシード王子と決まっていた。

だが……。


『ラシードまだ学生だ。兵役もこれからで……』


ミシュアル王子は言葉を濁したが、


『ラシード様におかれましては、些か浅慮な面が窺えるのではないかと』

『ヤイーシュ、殿下の弟君であられるのだぞ』


ターヒルは彼らしくたしなめるが、ヤイーシュは口にせずにはいられない性格だ。


『弟君だからこそ申し上げております。陛下もヌール様もラシード様にはお優しい。アーディル様が国に戻られぬ以上、ラシード様にはもう少し自覚を持って頂く必要があると思われます』

『ヤイーシュ!』


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