琥珀色の誘惑 ―王国編―
そのヤイーシュはターヒルとは別の方面からマッダーフの一族、ハルビー家を探っていた。


『なんだヤイーシュ。発言を許す』

『はっ。ハルビー家がラシード様に近づく気配があります』

『縁談か?』

『そのようです』

『だが、マッダーフに娘はライラしかおるまい』


マッダーフは王女を妻に迎えたため、王家への礼儀もあり、他に妻は娶れなかった。その代わり、ハーレムに何人もの愛妾を抱えている。そして、ライラは唯一正妻の産んだ子供だった。

息子は庶子でも身分を引き上げ後継者に出来るが、娘は庶子のままだ。それは、彼らの世代にはびこる悪習の名残だった。


『一族に娘はたくさんおります。それに場合によってはライラ様も……殿下が頑なに拒絶されるなら、王位継承第二位であられるラシード様の第一夫人に、と』


ミシュアル王子は唇を噛み締めた。

三人の母・ヌール妃はミシュアル王子の婚約者に日本人女性を選ぶ。そして、三男・ラシード王子の婚約者を定めないことを条件に、次男・アーディル王子の婚約者にクアルン王族の娘を受け入れた。

せめて末の息子には自由に結婚相手を選ばせてやりたい、という親心だ。


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