琥珀色の誘惑 ―王国編―
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。

どうしてそんなに大事なことを教えてくれなかったのか、ミシュアル王子をとっ掴まえて、すぐにも問い質したい気分だ。


「きっと、わたくしが色々ごねたことを聞いていて、躊躇したのでしょうね。大きな体に似合わず、情けないこと……そうは思いませんか? マイ」

「アルは、あ、いえ……殿下は別に情けなくなんか……」

「アルでよろしいわよ、マイ」

「はい。あの、妃殿下がごねたって」


そのことが気になり、舞はストレートに尋ねてしまう。

ヌール妃は声を上げて笑いながら、色々教えてくれたのだった。



どうやら、ヌール妃も改名の話は後出しだったらしい。

ヌール妃の場合、当時のカイサル王子には既に三人の妻がいた。そして二十一歳を筆頭に五人も娘がいたのだ。

四十四歳だったカイサル王子は一目惚れした通訳の日本人女性――当時二十二歳のひかりを口説き、滞在中に最後の一線を越えてしまったのである。

その当時は、カイサル王子の兄王が淫らな生活を送っていた為、今ほど純潔にうるさくなかった。

それでもクアルン王国の法律は法律。カイサル王子はひかりの純潔を奪ったことを知り、当然、結婚を申し込んだ。


しかし、ひかりはそれを断わる!


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