琥珀色の誘惑 ―王国編―
ライラの父・マッダーフはハディージャ妃の異母兄にあたる。

ハディージャ妃は名門ハルビー家のお姫様で、隣国の王太子妃に望まれていた。

豊かな胸とヒップをしており、とても美しかったという。今では顎や腹部のほうが豊かになってしまったが……それはともかく。


今から四十年前、十九歳のハディージャ妃を見るなりベッドに引きずり込んだのが先代国王だ。

当然、ハルビー家は王妃にと望んだが、先代国王には既に四人の王妃がいた。

ハルビー家の怒りを宥めるため、兄王の不始末に責任を取ったのが、ミシュアル王子の父カイサル国王だった。


そんな経緯があるため、ハディージャ妃は夫に捨てられた第三夫人の称号が嫌で仕方がない。


『叔母様、ご安心下さいませ。わたくしはまだ、国王正妃の椅子を諦めてなどおりませんわ』


ライラは蠱惑(こわく)的な笑みを浮かべ、今宵晩餐会が行われるヌール妃の宮殿を見つめたのだった。


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