花咲く原石
「でも確かにあの辺りは休める場所もなかった。…だったら、こうなって良かったのでしょうね。」

「オーハル…。」

「私は明日の準備や工具の手入れをしてから休みます。シイラは自由にして下さい。」

そう言いながらオーハルは手荷物を触り始めた。

「滅多にない出会いかもしれない。貴女やダイドンが言うように宝物になるかも。…明日に支障のでない程度に楽しむなら構わないでしょう。」

「えっ…?」

「ついでに明日の水を確保してきて貰えると助かります。」

差し出された水筒を見つめて言葉の意味を考えた。

しかしそれは少しの間だけで、彼の言わんとすることはすぐに分かる。

シイラは水筒を受け取るとはにかむように頬を緩めた。

「ありがとう、オーハル。」

シイラの笑顔に答えるようにオーハルも微笑んだ。

遠くから楽しそうに笑う声が聞こえてくる。

「楽しそうですね。」

「うん。」

声が聞こえてくる入口の方を見ながらシイラは水筒を胸に抱えた。



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