花咲く原石
そして思い出すのはオーハルのあの鋭い目付きと態度。

てっきり自分の女を守っているのだと思っていたが。

「成程、あれは牽制って訳か。」

迂闊に悪い虫が付かない為の盾のようなものだ。

確かにこんな旅の途中で変な男に引っ掛かってはどうしようもない。

信頼しあっている反面、2人の間に甘ったるい空気がなかったのはそういうことかとリトは静かに理解した。

「牽制?」

「あのお兄さんは父親代わりみたいなもんでしょ?うちの娘に手を出すな、みたいなさ。」

「えー?」

リトの言っていることの意味はよく分からなかったが、言い方が可笑しかったのでシイラは笑ってしまった。

オーハルを父親のように思ったことなど一度もないのだ。

「シイラは魅力的だからな。心配なんだろ。現に旅の途中じゃなかったら俺は交際を申し込んでるところだった。」

顔は笑っていたが強い力を宿す瞳は真剣なものだった。

嘘は言っていない。

でもその言葉にどれだけ誠意が込められているかは分からない。



< 121 / 200 >

この作品をシェア

pagetop