花咲く原石
まるでダイドンと笑い合っているかのような感覚にさえなりそうな、不思議な気持ちだった。

懐かしい訳でもないのに安心する。

リトは不思議な魅力を持っているような気がした。

「そろそろ休みな。明日は早いんだろう?」

「え?」

部屋のある方向を指してリトは促した。

確かに、十分な休養を取らないとこの先は更に過酷な事になる。

それはオーハルとも約束したことだ。

明日に支障をきたさないようにと。

名残惜しいけど行かなくちゃ、この時間を味わえただけでも十分すぎるほどだ。

「そうだね。ありがとう、リト。」

明日は早い、だからきっとリトには会えない。

二人が顔を合わせるのも、言葉を交わすのもこれが最後かもしれないと思った。

最後かもしれないと。

そう思うとシイラは動けなくなってしまった。

言葉を探すように黙り込んでしまう。



< 129 / 200 >

この作品をシェア

pagetop