花咲く原石
オーハルから告げられる度にシイラの中で不安が広がっていく。

何かの覚悟を決めた表情を見せるオーハルに対して、シイラは何も持ってはいなかった。

覚悟も決心も何もない。

不安だけ。

何も見えない夜道に馬車を走らせるように、ただオーハルという手綱を放さないように握りしめるだけだった。

「待って、オーハル…。」

判断がつかない弱さがシイラを地から動かさなかった。

怖い。

どうなってしまうか分からない恐怖が身体を震えさせる。

無理だ。

だって怖い。

自分の思いを伝えようとした、

その瞬間、

何かが横切ったかと思うと鈍い音がシイラの耳に響いた。



シイラの視界からオーハルが消えていく。

彼が倒れてしまったと気が付くのにそう時間はかからなかった。



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