花咲く原石
オーハルは焦りを隠しながらも確実に準備は始めていた。

この山小屋だけの狭い世界にならないように連れ出したり、様々な知識を与えたり。

ここだけが世界の全てじゃない。

いつ生活環境が変わっても大丈夫なように出来る範囲でオーハルは動いていた。

ダイドンの気持ちが動くことを祈り、公爵側に不信がられないように振る舞ったりと気持ちは常に落ち着かなかったが、それも構わなかった。

精神力なら軍隊で鍛えられている。

心身の鍛練も決して怠らなかった。

彼らを守る、それだけを目標に過ごしてきたのだ。

そしてオーハルの願いが通じたのか、ついにダイドンが首を縦に振った。

喜びの一時、しかしそれは予想外の言葉と共に告げられる。

「私の命はもうすぐ尽きる。どうかシイラを逃がしてやってほしい。」

そこからこの計画は本格的に始まったのだ。

父親の遺言という強い力を借りてシイラを連れ出す。

そして彼女たちの絶対安全圏である中央区に向かうのだと。



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