花咲く原石
「でも、私たちの一番の目的は違うんだからね!?」

「勿論です。」

半分拗ねているシイラを余裕の笑みでかわす。

そんな大人なオーハルに次第にシイラの気持ちも落ち着いてきた。

「最高の炉がある東に行くこと。それが私たち目的ですから。」

低い声が周りの音もシイラの感情も鎮めていく。

オーハルはゆっくりと食事を進めている。

すっかり止まってしまったシイラの食事は、彼女の手の中ですっぽりと収まっていた。

「ダイドンの遺志だもん。早く辿り着かないと。」

「…ええ。」

シイラの緑の瞳には強い意志が見える。

これは単なる旅行じゃない、亡き父の思いを遂げる為の供養の旅なのだ。

「でも…自分が死んだ後は形見の貴石で装飾品を作ってほしいなんて…ちょっとダイドンらしくないよね。」

小さく呟いた声はオーハルにも届いていた。

横目で彼女を確認すると、漏らした言葉通りに腑に落ちないといった表情を浮かべている。



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