花咲く原石
オーハルは視線をシイラに気付かれない内に前に戻した。

聞こえないふりをしていようと思ったのかもしれない。

しかしそうは出来なかったようだ。

「貴石の輝きは長くは保ちません。シイラ、ダイドンの思いを成し遂げる為にも急ぎましょう。」

パンを食べきり、水を飲んだオーハルが気持ちを切り替えるように告げる。

「うん。」

塞ぎ込みそうな気持ちを奮い立たせてシイラは口元に力を入れた。

そして手の中にあるパンを口に運び今日の晩餐の味を噛みしめる。

「美味しい。」

今日の疲労が重なって明日はもっと辛い日になるだろう。

出来る限りの対策をして明日に挑まなければ。

「食事を終えたら横になって下さい。少しでも身体を休めて疲れを明日に持ち越さないようにしないと。」

素早く食事を終えたオーハルはシイラの寝床まで準備を始めた。

少し高さのある位置に荷物を置いて簡単なクッションを作る。

夜行性の獣も届かないような高さはシイラに安心感を与えた。



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