花咲く原石
「目的の方向が分かりやすくていいかも。」

ぽつりと呟いた声にオーハルはくすりと笑った。

呟いたシイラ本人はオーハルに聞かれていたことも声に出ていたことも気付いていない。

気持ち勇み足で二人は休んだ分を取り戻すように進み続けた。

徐々に鳥たちの鳴き声が聞こえ始め、1日の始まりである夜明けがきたことを実感させる。

今日も天気は良さそうだ。

しかしその安らかな気持ちは一瞬にして奪われる。


「シイラ、止まって!」

「…っえ!?」

オーハルの張りつめた声が聞こえてシイラは反射的に足を止める。

後ろ手に静止を指示する仕草をしてオーハルは少し身を屈めた。

何となく胸騒ぎがして辺りを気にするように様子を伺う。

立ち止まったオーハルの行動の意味はシイラには分からない。

とりあえずオーハルに習ってシイラも身を屈めてみた。

分からないことが余計にシイラの心拍数を上げていく。

「オーハル?」

小さく声をかけても反応はしてくれなかった。



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