花咲く原石
聞こえているとは思う。

しかし神経を張りつめているオーハルに答える余裕はなさそうだ。

宙を見上げ、まるで気配を探るように周りの景色を見渡している。

静かな森の中で鳥達のさえずりは美しく響いていた。

何か得られるかもしれないとシイラもつられて空を仰いでみるがオーハルのような険しい表情にはならなかった。

横目で見ても彼はまだその表情を崩していない。

一体どうしたというのだろう。

「…どうかしたの?」

次第にシーラの声も強張ってきた。

何かあるのかと不安に思う気持ちがオーハルにも伝わる。

「いえ、珍しい鳥の鳴き声が聞こえたので。でも気のせいでしたね。」

荷物を持ち直し、オーハルはいつものように微笑んだ。

つられてシーラも疑問符を浮かべながらだが微笑む。

「どんな声だったの?」

「それを確認したくて耳をすませていたんですけどね、残念です。」

肩をすくめてみせる様子はさっきとまるで違う。



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