花咲く原石
本当に何でもなかったのだとシイラの緊張は少し解かれた気がした。

「シイラ、頑張りましょう。陽が高い内に距離をかせいでおかないと、夜の森は危険です。」

それは気を引き締めようというオーハルの合図。

「うん。分かった。」

確かに獣にも気を付けなければいけない。

オーハルがさっき鳴き声に強く反応したのもその所為だったのかとシイラは納得した。

休憩もなるべくとらないようにして、2人は目的地を目指して足を動かし続ける。

悠長なことはしていられない、カウントダウンは始まっているのだ。

まだ旅は始まったばかり。

しかし常に佳境にいるということを忘れないようにしなくては。

「でも、辛いときはちゃんと声をかけてくださいね?」

優しい声が前方からかかる。

「オーハルもね。」

力強い声が返された。

あまりにもシイラらしい返事にオーハルは声をあげて笑い分かりましたと手を振りかざす。

旅の2日め、太陽の光が深い森の中にも入り始めた。




< 46 / 200 >

この作品をシェア

pagetop