嘘つきな君からのキス

さあ、行こう。と手を引いて前を進む二人を追おうとした時にまた言葉が放たれた。


「もう一個、嘘ついてもいい？」


小さく笑う彼は、ようやく自分の事に気が付いたのかもしれない。

自分自身にさえ嘘を吐いていて、自分自身さえ見失ったその状態に。

だったら、私の役目は三神君を信用するだけだ。


「なぁに？」


とっても難しい彼と付き合っていくのは少々大変だけれど、それでも、彼がずるい言葉を発するたびに、好きだななんて思うから私自身も大変なのかもしれない。


「俺の事、三神くんって呼ぶの止めて？」


三神君はそう言って、私の手を引きながらまた一言。


「とか、嘘だけどね。……さ、帰るよ。玲雨」


私はまた、ちょっとだけ笑ってしまい、先を歩く姿に声を掛けた。






【END】