嘘つきな君からのキス
それはまるで、耳打ちするかの如く言葉を落としてくる。
「ねえ。二人で帰りたかったんだけど」
「えぇーーっと……」
心底不機嫌な様子で、納得いかない様子で。どうしたものかと考えあぐねていると、三神君は言った。
「うそ。どっちでもいいよ」
と、また嘘を吐く。でも、それは嘘なんかじゃなくて、嘘の嘘でもあって。
多分、鳴瀬君はまだまだ三神君を掴み損ねているのだろう。
そして、彼もまた自分自身を分かってなどいない。
だから、私はこういってやるのだ。
「三神君の嘘吐き」
と。
私の言葉にさっきよりも更に不機嫌な様子になる。なのに私に渡される言葉とは噛み合っていないから、ちょっとだけ笑ってしまった。
「嘘つきでごめんね」
そんな三神君が愛おしいのだ。