嘘つきな君からのキス
自習と言われて私は持っていた本を読むことにした。その間もグラウンドが気になってしまい、チラチラと視線を向ける。
今打った。今取った。あ、落とした。楽しそう。
心の中の何度目かの呟きの時、空きっぱなしの席に此方向きに人が座った。けれど元の席の人ではなかった。
「え、と。鳴瀬くん?」
「せーかいっ。話した事なかったから知らないかと思ってたんだけど良かったー」
以前から明るい印象を受けていたけど今もそれは変わりなく、ニコニコと浮かべる笑顔に好感さえ持てる。
「逢坂……玲雨。うん。じゃ、れーちゃんで!俺はふーくんでよろしく」
「え、あ、うん」
けど、タイプが逆だからか中々テンションについていけそうにはなく、相槌する外に返事は返せない。
風に靡く栗色の髪を何となく眺めながら相手の次を待った。
「れーちゃん今日は体平気?」
「あ、うん。平気」
「こう言ったら悪いけど、体弱いって女の子って感じするよねー」
「えと、実際大変だけどね」
とてもフレンドリーに見えても今話したのが初めてで、多少ながら緊張していた。