桜雪
「ええ、いいですよ」
 
上品で、優しそうな目をした人だったので、私は幾分くつろいだ感じで答えた。
婦人は少し微笑んで、ゆっくりと腰を下ろした。
 
見た感じ、年の頃は六十代前半、といったところだろうか。
 
私は婦人から桜の木へと視線を移した。
少し離れた所に小さな丘がある。
そこの木は、周りの木よりもひときわ大きい。
 
なぜ、あの木はあんなにも大きいのだろう。
私が何故かしら、いつも疑問に思っていることだった。
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