ふたり。-Triangle Love の果てに
~片桐勇作~
けたたましい電話の音で目が覚めた。
ぼやけた視界の中の時計は午前2時半をさしていた。
「…は…い、片桐です…」
新聞社からの急な呼び出しだろうか、そう思いながら受話器を取った。
『勇作くん、私よ、恵美。携帯に何度も電話したんだけど…』
「え…ああ、すみません。かばんの中に入れっぱなしで。ところでどうかしたんですか、こんな時間に」
『真琴ちゃん帰ってる?』
「真琴?えっと、ちょっと待ってくださいよ」
俺は受話器を片手に立ち上がると、キッチンの電気をつけた。
あまりに急に襲ってきた光に、目が慣れるまで数秒かかった。
玄関を見るも、真琴の靴はない。
部屋をのぞいてみるが、ベッドはもぬけの殻。
「まだ帰ってませんね。だってまだお店に出てる時間ですよね」
そう答えると、電話の向こうで息を呑む気配があった。
『実はちょっといろいろあって』
恵美さんはその夜の出来事をかいつまんで話してくれた。
客とのトラブルがあり、圭条会の人間に仲裁を頼んだこと、そして果物ナイフを真琴が振り上げたこと、そしてうつろな瞳で店を後にしたこと…
俺にはその時の真琴の気持ちが痛いほどわかった。
『ごめんなさい、勇作くん。あなたたちのご両親のことがあったのに。でも私たちも今夜みたいにあの人たちに頼らなきゃやってけないこともあるの…』
「それは…そうですよ。恵美さんは気にしないでください。俺からも真琴には言ってきかせますから」
『ありがとう。でも一体どこに行っちゃったのかしら。私たちも今から近くを探してみるわ』
「すみません、俺もすぐにそちらに向かいます」
比較的落ち着いていると思っていたのに、電話を切ると俺は慌てて服を着替え、玄関を飛び出していた。
あいつのことだ、酷な現実をつきつけられて怯えてどこかで小さくなってるはずだ。
昔からそうだった。
強がってても、その胸のうちはいつもビクビクしている。
俺が知らないわけないだろう、真琴。
兄貴なんだぞ、俺は。
頼りないかもしれないけど。
それでも俺はそばでずっとおまえのことを見てきたんだから。