ふたり。-Triangle Love の果てに
泰兄…
泰兄…
あなたのことが好き。
シャツに顔を押し当てた。
ぎりぎり彼の心に近付いたつもりなのに、ベールに覆われたその奥底の「あなた」をまだ感じることができない。
そんな謎だらけのあなただけど、大好きよ。
私ね、あなたのこと何も知らないの。
どこに住んでるだとか、どんな車に乗ってるだとか、休日の過ごし方だとか、食べ物の好き嫌いとか…
何にも知らない。
そんなあなただから…
さっきのキスだって、どういうつもりでしたのかも想像すらつかない。
でももう走り出した気持ちは止まらないの。
今夜はっきりとわかったわ。
ねぇ、泰兄。
お願い、そばにいて。
夜が明けるまで…
AGAHAの店内に通された私は、泰兄のワイシャツに袖を通した。
彼は「やっぱりでかいな」って笑いながら、あったかいブランデーを出してくれた。
店長の「勝平」と呼ばれる若い男性も、親切にタオルを持ってきてくれた。
気を利かせたのか、彼はタオルを置くとすぐに出て行く。
私は泰兄の出してくれたホットグラスを手に取り、鼻に近付けた。
ブランデーは温めるほど香りが強くなり、華やかさが増す。
落ち込んだ私にはちょうどよかった。
こんな心遣いのできる人だった?
なつみ園で一緒だった頃からは想像もつかない。
彼なりに、今の人生を切り開いてきた証なのかもしれない。
どんな苦労があったのか想像できないけれど、こんな店を取り仕切るほどの知識や人望を勝ち取るには並大抵の努力ではすまなかっただろうに。
私は店内をぐるりと見回した。
「泰兄はすごいわ」
「いきなりなんだ」
「だってこんな高級クラブのオーナーだなんて」
大理石の床、本革張りのソファー、調度品も高級なものばかり。
「オーナーだからすごいのか?高級クラブの?くだらないな」
鼻で笑いながら泰兄はブランデーを口に含んだ。
「だって困った客だっているでしょう?そんな人を相手に話をつけるのは、結局あなたの仕事だわ。怖くはない?」
「怖い?バカな。自分さえブレなければ客だって理解してくれる」
「ブレなければ、ね。あなたは強いわ。どうしたらそんなふうに強くなれるの」
悲痛な私の声に、彼は驚いたように目を見開いてこちらを見る。
「お願い、教えて。いつから、どうやってあなたは強くなれたの」
一度は引いた涙が、息を吹き返したようにこみあげてくる。
「強くなりたいの、私」
握りしめたタオルが苦しげによじれている。
「自分のこと強いと思ってた。でもそれが見せかけだって今日まざまざと思い知らされたわ」
泰兄は無言のまま、私の顔を見る。