ふたり。-Triangle Love の果てに


静まり返った教会の中。


皆が一様に外の音に耳をすます。


微かなエンジン音がやがて止まった。


バタン、と運転席のドアを閉める音。


私の胸が大きく脈を打ち始めた。


そして聞こえたの。


石畳を打つあの靴音。


昔とちっとも変わらない、独特の間合い。


コツリ、コツリ…って。


彼だ…彼の足音。


間違いない。


ああ、やっと…!


靴音が響く度に、この胸も激しく打つ。


やっとあなたに会える…!


ゆっくりだったその靴音が、次第に早くなる。


早足の彼が目に浮かんだ。


泰兄…!!


たまらず私はドレスの裾をつかむと、バージンロードを逆向きに駆けだした。


「あっ、こら!真琴!」


天宮先生が慌てて呼び止める。


でもそんなのおかまいなし。


走りにくくて、ハイヒールを脱ぎ捨てた。


子ども達のひやかす声をくぐり抜け、私は古びて重たくなった木の扉を思いっきり開け放った。


ギィィィ…


軋んだ音と共に、バージンロードに太陽の光が一筋に射し込み、奥に掲げられた十字架にまで届く。


「泰兄!!」


光に満ちた教会の庭。


眩しさに目を細めた。


「マコ!」


懐かしい声が耳に届く。


光の中目を凝らすと、背の高いシルエットがこちらにむかって駆けてくる。


その腕には大きなブーケ。


真っ赤なバラの花。


裸足のまま、私は彼に向かって駆け出した。


泰兄!


泰兄!!


一歩一歩と距離が縮まる。


でもそれがまどろっこしい。


少しでも早く彼に触れたくて、思いっきり腕を伸ばした。


「泰兄!!」


ああ、やっと…


やっと…


そして導かれるように


私たちは抱き合った。


ブーケが地に落ちる。


彼が私を


私が彼を


力の限り抱きしめた。


3年分の想いをこめて


抱きしめ合った。

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