ふたり。-Triangle Love の果てに
~片桐真琴~
「同窓会」の夜から、泰兄は3日とあけずにYesterdayに来るようになった。
それも見計らったように、平日のお客さまが少ない時間帯に。
だから、だいたい私と泰兄はカウンターをはさんでふたりきり。
「相原さん、最近真琴ちゃんがお気に入りだな。俺のカウンターに寄りつきもしない」
開店前にマスターが笑いながら言った。
「そんな。ただ同じ施設を出たなじみで来てくれるだけです」
「本当にそれだけかなぁ。あの人さ、真琴ちゃんがここに働き出してすぐに、いい子を雇ったね、きっといいバーテンダーになるって俺に言ったんだよ」
「私のことをですか?どうして…」
「カッターシャツだよ」
「カッター?」
私は着ているシャツに視線を落とした。
どうしてこんなもので…
首を傾げる私に、マスターは目尻を下げた。
「たたみ皺がないだろ?クリーニングに出せばそうはいかない。でも真琴ちゃんは自分できっちりとアイロンがけしてるってことだよ。人任せにせず、手も抜かず、カッターシャツ1枚にまで気を遣ってる、そう言いたかったんだよ、相原さんは」
そんなところを見てたの?
手が荒れてるって言ったのも、私のことを思って言ってくれたの?
「相原さんも接客業だから、そういうところは厳しい目で見てるんだなぁ」
それにそんなに前から私のことに気付いてくれてたなんて…
ちょっと嬉しい…
「それにさあ、真琴ちゃんかわいいからさ、相原さんも気になってんじゃない?」
「まさか。マスターのカウンターにはいつもお綺麗な方を連れていらしてたんでしょ」
「まぁ確かに美人さんとは来られてたけど、真琴ちゃんとは雰囲気が違う人ばっかりだなあ。何だろ、綺麗すぎるって感じだな、人形みたいに整いすぎてる」
「じゃあ、私はそれほどでもないってことですね」
わざとスネた顔をしてそう言うと、マスターが慌てて手を振った。
「違う、違う!そういう意味じゃなくて」
マスターの反応がおもしろくて、わざとつっかかってみる。
「あら、じゃあどういう意味なんです?」
「そうだな、真琴ちゃんはオジサン好みなんだって」
「は?」
喜んでいいものなのか、思わず首を傾げてしまった。
今まで黙って私たちのやりとりを聞いていた恵美さんが、突然笑い出した。