ふたり。-Triangle Love の果てに
天宮先生とは去年のクリスマス会で会ったばかりだから、3ヶ月ぶりくらい。
「泰兄も一緒だったんですけど、どこかに行っちゃって…すみません」
そう言う私に天宮先生は「昔からあいつはそういうとこがあるんだ」と白い歯を見せた。
先生は彼のことをよくわかってる。
だから昔から、彼への接し方が上手だった。
でも、私は何も知らない。
私が泰兄とこの施設で過ごしたのは3年ほど。
しかも彼は他の子と違って群れるのを嫌ってたし、人を寄せ付けない雰囲気を発していた。
会話したのも、木の上の私を助けてくれたのと、「マコ」って呼んでやる、そう言った時くらいだった。
先生に近況報告をした後、私は施設の子どもたちに本を読んだり、勉強をみたりして過ごしていた。
「真琴、そろそろ行くぞ」
天宮先生がコートを着込んで、部屋に入ってきた。
「行くってどこにですか」
「あいつのとこだよ、泰輔のとこ。どうせ浜で気取って煙草でもふかしてるに決まってる」
思わず大きな声で笑ってしまった。
だって先生の言う通りのことを、あの人ならしていそうだったから。
「あいつのことが気になるんだろ?」
「別にそんなんじゃないです」
動揺を隠そうとしたけれど、きっとこの時の私の顔は真っ赤だったに違いない。
「だってさ、おまえ。さっき話してても泰輔のことばっかりだったじゃん」
嘘!
本当に?
先生はニヤニヤしていた。
「ほうら、行くぞ」
私は天宮先生の自転車にまたがった。
そんなに泰兄の話したっけ?
確かに私の働いてるバーによく来てくれるとは言ったけど…
そんなことを思っているうちに、私たちを乗せた自転車は滑るように坂道を下り始めた。