妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「おい。で、烏丸が何だって?」

 呉羽の髪を梳きながら、そはや丸が言う。
 そはや丸の膝に頭を載せて、うとうとしていた呉羽は、ああ、と気のない返事をした。

「そういえば、何だろうな」

 結構切羽詰まった感じに思えなくもなかったが、だからと言って、ほいほい会いに行ける状態でもない。
 向こうから来るのならともかく、こちらは官位もない地下人だ。
 右丸自身に高い身分がなくても、左大臣の屋敷にいるというだけで、呉羽が会いに行くわけにはいかないのだ。

「気になるが・・・・・・。私がいきなり訪ねていっても、門前払いだろ。どうしようもないさ」

「面倒くさいねぇ、人間様は」

 けけけっとせせら笑いながら、そはや丸は櫛を放り上げた。

「・・・・・・用があるのは、烏丸じゃなくて右丸のほうじゃねぇか?」

 面白そうに言う。
 そはや丸は、右丸が呉羽を慕っているのを知っているのだ。

 というより、気づいていないのは、鈍い呉羽だけなのだが。

「同じ事だよ。でも私を呼んだのは烏丸だ。右丸に、そんな能力ないだろ。只人(ただびと)なんだから」

 案の定、深く考えることなく呉羽は言う。
 まぁな、と呟き、ふとそはや丸は真顔になった。
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