妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「ほれ。ったく、年頃の娘とは思えない姿だな」

 言いながら、男は呉羽の横に移動すると、ぐい、と彼女の頭を自分の膝に倒した。

「お前にくっついたって、ちっとも暖かくないからな。むしろ冷たいから、冬はきつい」

「当たり前だろ。刀に体温などあるかい」

 当然のように言い、男は膝に載せた呉羽の頭に櫛を当てる。

 この男こそ、呉羽が外法師としてやっていく上で欠かせない相棒なのである。
 右丸からすると恋敵。

 しかしその実体は、自身で言うように刀なのだ。
 しかも只の刀ではない。
 持ち主の身体に直接取り憑き、己よりも弱ければその身を喰らう、妖刀である。

 呉羽の右腕には、男---そはや丸が取り憑いている証である紋様が刻まれている。
 取り憑いた場所を斬り離せば、己より強い宿主であってもそはや丸は主から逃れ、自由の身になる。
 取り憑いている間は、宿主に逆らえないのだ。

 強く気に入らない宿主から逃れるには、取り憑いた場所を斬り離すしかないが、場所が悪ければ、宿主はその時点で命を落とすことになる。

 呉羽の紋様は右腕。
 腕を斬り離せば、そはや丸は自由だ。
 呉羽もおそらく、命まで落とすことはなかろう。

 だが、そはや丸は文句を言いつつも、呉羽に従っている。
 そはや丸の言い分は、『呉羽は自分より強いから』だそうだが・・・・・・。
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