妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「ふん。右丸のことを心配してるわりに、結局自分が一番かい。ま、素人はいないほうが、やりやすいがな」

 馬鹿にしたように女官を見送った後、そはや丸は右丸の頬を乱暴に叩いた。

「おい烏丸。起きな」

 愛情の欠片もないような手つきで、ぺしぺしと何回か頬を叩いていると、やがて右丸の眉間の皺が深くなった。
 そして右丸の口から、烏丸のものと思われる言葉が飛び出す。

『うう、そ、そはや丸かぁ。おいらは別にいいんだけど、右丸はがっかりするだろうなぁ』

「へっ。呉羽に会いたきゃ、蓮台野まで来るんだな。それはともかく、思った通り、お前は元気だな」

『うん。おいらは何ともないの。でも右丸がさ、きついみたいなの』

 どこか能天気な物言いが、いかにも苦しんでいる右丸の口から出るのは、事情を知らない者が見ると不気味である。

「ふ~む。やっぱりお前が入ったことで、身体に無理が出てきたな」

『ええっ』

 烏丸の声は悲痛である。
 烏丸も、勝手に右丸の中に入ったわけではない。
 右丸も承知の上だが、お互い知識が足りなかったのだろう。

 只人の右丸はもちろん、烏丸だって、まだ子供だ。
 自分の妖力がどれほどのものかも、まだよくわかっていないだろう。
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