妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
---右丸が死ねば、呉羽は悲しむかな?---

 そんな考えが、頭に浮かぶ。
 そして、そうなった状態を想像し、何故か右丸に嫉妬する。

 そはや丸は、端から妖刀だ。
 ‘死ぬ’ということがない。
 故に、そはや丸のために、呉羽が悲しむことはない。

 何故それがこんなに悔しいのかはわからないが、そはや丸は冷たい瞳で苦しむ右丸を見下ろした。

---いや、俺は俺の主たる呉羽が、涙するようなところを見たくないんだ---

 自分の主は強くあって欲しい、と思うから、呉羽が悲しむようなことは、避けるべきなのだ。
 そう納得し、そはや丸は少し右丸を押さえる手を緩めた。

 そのとき。

「ん・・・・・・」

 女官が顔をしかめ、ゆっくりと目を開く。

---ちっ。さすが肝の太い女だぜ。もう目覚めやがった---

 手を緩めていたお陰で、右丸の口は女官から離れている。
 だが身体はほとんどが、まだ女官に覆い被さっているし、苦しんでいるところを見られるのも厄介だ。

 案の定、女官は己の上に乗っている右丸に、驚いたように手をかけた。

「まっまぁ右丸! な、何のおつもり?」

「・・・・・・ああ、右丸はただ、あなた様をお守りせんがために、そのような格好になっただけですよ」

 右丸の肩を押すように引き離そうとする女官に、そはや丸が近づきつつ口を開いた。
 そして片膝を付き、ぐっと女官に身体を寄せると同時に、さりげなく右丸を横に転がし自分の後ろに回す。
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