妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
 呉羽は全然気にしていないようだが、そはや丸は呉羽の頼みなら、基本的に何でも聞いてくれる。
 言葉の命令に力がないのであれば、そはや丸のあの性格からすると、呉羽のような小娘の言いなりになることなど、絶対にしないのではないか。

「そはや丸は、お姉さんの言葉は絶対だって思ってるみたいよ?」

「そうかぁ? 結構あいつも言い返すぞ。全然従順じゃないしな」

「でもずっとお姉さんといるのよね。お姉さんは、そはや丸のことが好きなのよね」

 難しいことは、よくわからない。
 烏丸は眠くなってしまい、自分で言った後に、ぴゃ、と欠伸をした。
 呉羽も眠くなったようで、烏丸を抱いたまま、うつらうつらとしている。

「そはや丸のことは、好きとか信頼とか、そういうんじゃない。よくわからないな。それ以前に、あいつが私をどう思ってるのか。考えてみれば、高丸の言うように、私から離れようと思えば簡単なんだ。あいつの冷淡さからすれば、いまだにそれをしないのは、考えられないことだな。そはや丸なら、私を喰い尽くすことぐらい、屁とも思わないだろうに」

「・・・・・・そはや丸も、お姉さんのことが好きなのね」

 すでに夢うつつの烏丸の言葉に、そはや丸は危うく反論しそうになった。

---くそっ。とっとと寝ちまえば良かったぜ---

 気になって起きていたために、余計な感情が芽生えてしまった。
 何故話の行方が気になったのかも、烏丸に指摘された自分の気持ちも、本当のところはわからない。

 もやもやした気持ちのまま、そはや丸は苛々と、身体にかかった衾を握りしめる。
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