妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「・・・・・・そう・・・・・・かな。そうだと良いな・・・・・・」

 しばらく経ってから、ぽつりと聞こえた呉羽の言葉に、そはや丸は耳を疑った。
 と同時に、反射的に上体を起こして振り向いてしまった。

 しまった、と思ったが、もう遅い。
 身体は自然に動いてしまった。
 今呉羽と目が合っても、何と言えば良いのか。

 だが。

 しん、と静まり返る部屋の中で、そはや丸は上体を起こして振り返った姿勢のまま、しばし固まっていた。

 目の前には、すやすやと眠る呉羽の姿。
 烏丸も、呉羽に抱かれて眠っている。

「・・・・・・何だよ、寝言かい・・・・・・」

 安堵のため息と共に、そはや丸は身体の力を抜いた。
 ほっとしたのも確かだが、何故か残念な気持ちが心に残る。

 くしゃん、と呉羽が小さくくしゃみをし、身体を丸めた。
 そはや丸は己にかかっている衾に視線を落とした。

---俺は刀だからな。・・・・・・体温もない。わかってるくせに、衾なんてかけなくても良いのに。馬鹿なんだな、呉羽は---

 心の中で若干の憂いを含んだ悪態をつき、そはや丸は衾を呉羽にそっとかけた。

 じっと呉羽を見つめる。
 何の憂いもないような寝顔の呉羽は、この葬送の地で妖に囲まれているとは思えない可憐さだ。

---ま、こいつの可憐さは、見かけだけだがな---

 わざと大きく鼻を鳴らし、どかっとその場に座り直したそはや丸の胸は、それでもやはり、じくじくと疼くのだった。


*****終わり*****
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