無口な彼が残業する理由 新装版
とうとう聞いてしまった。
口に出すつもりはなかったのに、熱のせいで口まで不調らしい。
返事を聞くのが怖くて丸山くんの顔が見れなかった。
くしゃっと布団に丸まって反応を待つ。
私が発して数秒後。
「……は?」
短いレスポンス。
即答ではなかったことに、やっぱりかと苦しくなる。
私は更に丸まった。
熱のせいで頭がガンガンする。
丸山くんは心底呆れたような声をだした。
「それ、どういう意味?」
ぽん、と肩の辺りに重みを感じ、揺すられる。
頭が痛いからやめてほしい。
「丸山くん、青木のことばっかり気にするじゃない」
投げやりに突き付けると
笑い混じりのため息が聞こえた。
「それで、俺が青木?」
「それだけじゃないもん」
青木と一緒にいる私への冷たい視線。
その視線に何度胸を痛めたことか。