無口な彼が残業する理由 新装版
私はみるみる落ち込んできて、
席を立った。
丸山くんがどこ行くの? なんて聞いてくれることもない。
パーテーションで簡単に仕切られた席はそんなに広くなく、
他の社員の背中を気にしながら廊下に出て、
先にあるトイレへ。
用を足して鏡を見ると、
空きっ腹にじゃんじゃんビールを流し込んだ私の顔は
すっかり酔った時の顔になっていた。
そっと髪をかき上げる。
左耳の下に赤い丸山くんの跡。
今朝のことを思い出して、私は余計に赤くなった。
その顔をペチペチ叩いてトイレから出る。
すると男子トイレの方の壁に、丸山くんが寄り掛かっていた。
私は素通りしようと思ったけれど、
その前に道を塞がれてしまった。
「気分悪いの?」
顔を覗き込むように見てくるから
私は俯いて視線に抗う。
「ううん、全然」