無口な彼が残業する理由 新装版
「じゃあ、この後二人で飲み直しませんか? デザインの話、聞かせてください。早くお役に立てるようになりたいんです」
小悪魔の誘惑。
酒のせいか、そんなフレーズが頭に浮かんだ。
私はあくまで視線を他に向けて、
丸山くんの反応を待つ。
「まあ、いいけど」
……いいんだ。
心のどこかで、断ると思ってた。
直接好きだとは言われてないけれど、
普段無愛想な彼がたまに優しくしてくれるから、
キスしてくれるから、
マークまでつけてきたから、
私のことを少しでも意識して、
断ると思ってた。
何となく今日は私と過ごしてくれるんじゃないかと期待してた。
バカじゃん、私。
私はきっと丸山くんが断るのを聞いて、
友達以上恋人未満な関係の中に安心を得ようとしてたんだ。