無口な彼が残業する理由 新装版

欲張ると全てが上手くいかなくなる。

私はそう聞いて、

彼は不器用で仕事ができるタイプの人間ではないのだと思った。

あの面接で手応えを感じ、

入社を果たした私は完全に思い上がっていた。

私だって、欲張るとダメだった。

恋愛感情に翻弄されると仕事でミスをしてしまう。

体調まで崩してしまう。

その代わり、恋から離れて仕事に打ち込めば夢にグッと近付いた。

二兎を追う者は一兎をも得ず。

私は丸山くんへの気持ちを捨てて、

夢だけを追えばいい。



あの彼は元気にしているだろうか。

名前くらい覚えておけばよかった。





< 191 / 382 >

この作品をシェア

pagetop